2008/11/14

欲しがりの王様

ある所に
なんでもかんでも欲しがってしまう
わがままな王様がいました。

「家来よ、今の私にない物はなんだ?」

「はい、王様。それは[大勢の家来]です。」

「なるほど、大勢の家来か。それは欲しい。では1000人の家来をこの城に連れて来い。」

お城の家来達は町へ出て、若い男を1000人連れて行きました。
町からは若い男の姿が消え、残った女、子供、老人は大変な苦労をしました。

「家来よ、まだ私にない物はなんだ?」

「はい、王様。それは[たくさんの食料]です。」

「なるほど、たくさんの食料か。それは欲しい。では町の女、子供、老人に畑を耕させろ。」

城の家来は町へ出て、女、子供、老人に畑を耕させました。
女、子供、老人は、毎日過酷な労働のせいで疲れ果てて行きました。

「家来よ、まだまだ私にない物はなんだ?』

「はい、王様。それは[大きな土地]です。」

「なるほど、大きな土地か。それは欲しい。では戦争の準備をしろ。」

王様の国は次々にほかの国を滅ぼし、たくさんの土地を手に入れました。
攻められた国では、たくさんの人が死に、たくさんの人が泣きました。

「家来よ、まだまだ、まだ私にない物はなんだ?」

「はい、王様。それは[有能な部下]です。」

「なるほど、有能な部下か。それは欲しい。では有能な部下を一人、ここへ連れて来い。」

王様に命令された家来は、心優しい一人の少年を王様のもとへ連れて行きました。
王様はその心優しい少年をたいそう気に入り、その家来をクビにして、少年を新しい家来にしました。

「どうだ新しい家来よ!これでもう、この私に、ない物は無くなった!」

王様は大きな声で笑いました。すると少年は

「いいえ、王様。まだない物が一つあります。」

と言いました。

「何?まだ私にない物とはなんだ?」

王様は尋ねました。

「この国には、そして王様には、[心]がありません。」

少年は言いました。

「なるほど、[心]か。それは欲しい。私は[心]が欲しいぞ!」

ただ王様は心の手に入れ方がわかりませんでした。

「家来よ、[心]とは一体なんだ?人か?食べ物か?土地か?[心]とはどうすれば手に入るのだ?」

王様は少年に尋ねました。

「いいえ、王様。人でも、食べ物でも、土地でもありません。それでは王様に、[心]の手に入れ方を教えます。まず始めに、若い男の家来を町に戻すのです。」

王様は少年に言われた通り、若い男の家来を町へ返してあげました。
町の人々は、若い男の帰りを大いに喜びました。

「あぁ、家来がお前だけになってしまった。これで私は、[心]を手に入れられたのか?」

「いいえ、王様。まだです。次は国民に過酷な畑仕事をやめさせるのです。」

王様は少年に言われた通り、国民に過酷な畑仕事をやめる様に言いました。
国民は過酷な畑仕事から解放され、皆が元の仕事を始める様になり、町は大いに賑わいました。

「あぁ、食べる物がなくなってしまった。今度こそ、私は[心]を手に入れられたのか?」

「いいえ、王様。まだまだです。次は国民に、豊かな暮らしをさせるのです。」

王様は少年に言われた通り、お城にあった金銀財宝を全て売り渡し、町の人々にお金を分け与えました。
生活の豊かになった人達は皆、王様に感謝をしました。

「あぁ、全財産がなくなってしまった。これでは土地も返さなくてはならない。今度こそ、今度こそ私は[心]を手に入れられたのか?」

「いいえまだまだ…。」

少年はそう言うと、次から次へと王様に[心]の手に入れ方を教えました。
その度に王様は

「今度こそ…?」

と少年に尋ねました。

それから少しの月日が流れ、王様は不治の病で倒れてしまいました。
ベッドで寝ている王様は

「人も、食べ物も、土地も、お金までなくなってしまった。これだけやっているのに、私は未だに[心]が手に入らない。私はきっと[心]が手に入らないまま死ぬに違いない。」

と、悲しそうな目で少年に言いました。
するとベッドの横に立っていた少年は言いました。

「いいえ、王様。あなたはとっくに[心]を手に入れています。」

王様は目を丸くして驚きました。

「何!それは本当か?」

「えぇ本当です。だから、病気の王様に町の人達が、こんなにもたくさんの花束を届けに来るのではありませんか。」

「私は花束なんて欲しくない![心]が欲しいのだ!」

「…王様。[心]とは、町の人達から贈られてくる[花束]の事なのです。」

少年は、王様に一つの嘘をつきました。

「何!?そうだったのか!?[心]とは、町の人から届けられる[花束]の事だったのか。」

王様は少年に聞きました。

少年は微笑むだけでした。

「そうか、そうだったのか。やったぞ!ついに私は[心]を手に入れることが出来た!しかもこんなにたくさん…。」

王様は嬉しそうに叫ぶと、にっこりとした顔をして、スーッとベッドに沈み込みました。
その後すぐに王様は息を引き取りました。

花束に囲まれた王様は、最後のほんの少しの時間だけ、[心]を手に入れたのでした。

0 件のコメント: